現在、その国にとって、どこの国からの投資が一番大きいのか、例えば、タイは日本からの投資が増えているがその背景は何故なのか?

タイの投資の現状

着実に増加する海外からタイへの直接投資

近年、タイは投資先という観点でASEAN諸国において、ベトナムと並んで有望であるという評価が高くなっており、ASEAN諸国における投資先として、タイは未だに上位3位内にランクづけされている。特にここ数年、中国への投資に対して様々なリスクが表面化してきたことで、タイの持つ比較的良好な投資環境が見直され、投資リスク分散先「チャイナ+1 (プラスワン)」の候補として、中国に次ぐ海外拠点として有力視されるようになり、中国へ一極集中するリスクを回避するために、生産拠点をタイに移す企業も増えている。外国の投資会社の中には、タイは安全で利益を得られ、よく管理されたプロジェクトを持ち、また政治的にもよりオープンで中間管理層がしっかりしているため、中国に代わる良好な投資先であると見ているところもある。

1997年のアジア通貨危機により国内経済が大きなダメージを被って以降、タイは国内消費や海外輸出の順調な伸びを背景として堅調な経済成長を持続しており、最近は製造業だけでなく、拡大する内需の動きを狙って、物販業、飲食業、サービス業などの投資も目立っている。

タイは低い生産コスト、豊富な熟練労働力、透明な法規制、今後も締結が見込まれている二国間合意によるメリット等により競争力を維持し続けている。タイは人件費の高騰などで「海外生産基地としての魅力を失った」という声も聞かれるようになったが、現在は安いだけの商品は卒業し、一層付加価値のある製品に積極的に取り組んでいる。

タイは電力、水道、空港、港湾、交通等のインフラが、周辺のASEAN諸国と比較して良く整備されており、 海外からのタイへの直接投資額は年々増加している。最近完成したバンコクとハノイを結ぶ東西回廊は両国間の輸送時間を海上輸送の1/4に短縮し、タイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー間のビジネスや投資機会が急速に拡大されている。

最近、東南アジア各国にある工場を、タイに集中させようという動きが見られる。トヨタ自動車や韓国のLG電子が一部車種や商品の生産工場をタイに集約させることを決定したように、今までの現地生産し販売していた車種や製品が、今後タイから各国に輸出する構造にシフトしていく傾向がある。タイはインド、中国に近いと言う地理的優位性もあり、現在FTA、EPAなどを各国と積極的に結んでおり、関税などが撤廃されるため輸出入が容易になるというメリットもある。実際、昨年結んだインドとのFTA締結の効果は大きく、インド向けの輸出が急拡大している。

タイの投資概況

2007年の対タイ投資奨励の全申請は1,318件、投資額の合計は6,558億バーツとなり、2006年の4,942億バーツと比較して32%増加した。タイ投資委員会(BOI)のサーティット事務局長は、2007年は政情や景気に不安材料があったものの、外国人投資家はタイの潜在力を信じ、投資を決心した、と公表している。

投資奨励申請の一番多い業種はサービス業及び公共事業の341件で、投資合計額は1,727億バーツ。2位は自動車・自動車部品及び機械工業で273件、1,712億バーツ。3位は化学工業、紙及びプラスチックで173件、1,518億バーツ。海外からの直接投資に関しては、2007年の投資奨励件数は846件、投資合計額は5,027億3,700万バーツとなり、2006年の3,076億6,800万バーツと比較して63%増加した。投資奨励申請の一番多い業種は自動車・自動車部品及び機械工業の1,535億3,100万バーツ。2位はサービス業及び公共事業の1,248億500万バーツで、3位は化学工業の1,000億1,000万バーツ。内訳を見ると、自動車関連(部品やサービス含む)等が多くAFTA(ASEAN自由貿易地域)や中国、インドとのFTAを考慮した動きも見られる。

対タイ投資額の一番多い国は以前と変わらず、日本がトップ。投資奨励申請件数は300件で、投資合計額は1,490億7,100万バーツ。2006年の1,104億7,600万バーツと比較して34%増加。次に多い国はアメリカの857億5,200万バーツで、2006年の370億5,900万バーツと比較して131%増加。以下、欧州連合741.5億バーツ(142%増)。韓国は115.7億バーツ(121%増)、中国は171.8億バーツ(38%増)だった。他国に比べて、日本はタイに対する投資額がずば抜けて多くなっている。一方で、シンガポール、マレーシアなどのASEAN諸国からの直接投資が伸びてきていることもあり、今後も更なるタイに対する投資が加速していくと思われる。

2008年の投資については、投資奨励を促進している自動車製造業をサポートするため、自動車部品、自動車用電子機器などの自動車関連事業が拡大する見込みだ。

日系企業の進出状況

日系企業進出の歴史をみると、1980年代までは日本が既に比較優位を失っていた繊維・紡績などの軽工業が中心だったが、1990年代以降は自動車、電気・電子機器、精密機械、食品加工など多岐にわたっている。特に、1997年のアジア通貨危機以降は自動車、家電などの大手セットメーカーが、タイを輸出基地とする戦略をより明確化し、同時に部材の現地調達率アップを打ち出したことに呼応し、2次・3次以下の部品供給メーカー(特に中堅、中小企業)の進出が相次いでいる。

進出日系企業数は、バンコク日本人商工会議所の登録ベースで1,233社(2005年4月現在/在外日本人商工会議所会員数で最大、在タイ外国商工会議所は日本が最大)となっているが、未登録の企業まで含めると、在タイ日系企業総数は6,000~7,000社と推定される。そのうち製造業が約60%を占めており、内訳は電気、機械が最多、以下、自動車関連、化学、金属と続いている。

日本のタイに対する直接投資は堅調に推移している。タイ経済事態は鈍化傾向にあるものの、日本からの直接投資に関しては、相変わらず好調な推移が続いている。2004年以降は連続して3,000百万米ドルを超えており、日本からタイへの直接投資累積額(投資委員会認可ベース)は、日本の総投資額は外国企業投資額全体の40%強を占め、諸外国の中で最大である。

近年は日本の自動車メーカーによる投資の増加が顕著で、日産自動車、トヨタ自動車、ホンダ、いすゞ、三菱自動車など大手自動車メーカーがタイに工場を置いている。タイは「アジアのデトロイト」と呼ばれているほどで、現在では自動車の基幹部分のほとんどがタイ国内で作られている。タイに日系の自動車関係の製造工場がすでに集積していることもあって、自動車産業を中心に、現在でも、タイに大規模な投資を行っている。一方、タイは食品産業でもタクシン政権の頃から「アジアのキッチン」を目指すという目標があり、日系企業のなかには近年、中国産の食品のリスク回避策として、タイに工場を移転や分散させる傾向が見られる。

日本からタイへの日系企業の本格的な進出が始まってから既に20~30年が経っているが、この間日本から自動車産業を初めとする各種大企業や中堅企業のタイ進出は既に一段落している。現在は、自動車部品や金型などのサポーテング産業に代表される中小規模の企業が、大企業、中堅企業の要望によって、または自らの意思でタイに数多く進出してきている状況である。その結果、工業団地の販売も2000年以降は好調のようだ。

こうした日タイの経済活動が両国間の良好な関係の基礎となっている。日本の直接投資はタイ国内における雇用創出など、タイの経済成長の持続にも貢献している。今後は、工場を置いて製品を輸出していくだけでなく、タイの発展によってタイ国内の市場規模が拡大することもあり、工場以外の、よりさまざまな企業の進出が期待される。

終わりに

タイは日系企業にとって優良な投資先としての地位を十分に確立している。経済自体も安定的な成長を継続しており、インフラ面の整備なども順調に進んでいることから、今後も日系企業の安定的な進出が見込まれる。タイはこれまで歴史的に積み上げてきた膨大な投資ストック(多くは原価償却終了)を背景として、日本のビジネスのやり方が比較的通用するため、投資先としてある程度の計算ができるという意味で、中国を補完する「チャイナ+1」の位置付けとして、その存在感を増すことが期待される。ただ、タイの大躍進時期は終わり、これからは安定成熟期に入るだろう。また、タイはこれからは生産地としてだけではなく、市場規模5億人のASEANの拠点としても有望だ。タイは「チャイナ+1」の有力な候補に留まることなく、インドとのFTAなどを武器に、アセアン諸国、インド、中東などへの供給・進出拠点として、投資国としての評価がますます高まっていくことも予想される。

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