現在、その国にとって、どこの国からの投資が一番大きいのか、例えば、タイは日本からの投資が増えているがその背景は何故なのか?
日本企業の中国直接投資の現状
日本企業の中国への投資ブームが続いている。80年代央の第1次投資ブーム、90年代前半の第2次ブームに続いて、現在、2000年から始まった第3次ブームの渦中にある。中国のWTO加盟(2001年12月)による規制緩和・市場開放への期待感と安定的な中国の経済成長が背景にある。
2007年11月に発表された国際協力銀行の「日本の製造企業の海外直接投資アンケート」調査結果によれば、中国は「今後3年程度の有望事業展開先国」として1位を維持しており、回答企業の約80%が生産拠点を持つ同国は「海外展開先として引き続き重要」と、他国に比べて中国を中期・長期の投資対象国として有望視する日本企業が極めて多い。経済産業省が2007年3月に発表した海外事業活動基本報告の中で明らかにした数字によれば、2006年3月時点で、アジアに展開している日系企業(日本企業の出資比率10%以上が対象)の雇用者数は300万人を超えており、その中で中国は141万人を占めている。
ただし、「今後3年程度の有望事業展開先国」としての、中国への得票率はピーク時から4年連続で減少している。その一方で、インドでは「投資の計画あり」とする企業が増加しており、実投資への結びつきが加速。同国は「長期的有望事業展開先」で初めて中国を抜いて1位となり注目が一段と高まるなど、日系製造企業の投資先として、中国へ集中していた関心が他の新興国へ分散する傾向が見られる。
その一方で、中国政府は近年、自国に進出する外資製造業の選別強化を行っている。先進技術や資源を国内に持ち込む形の事業を優遇する半面、低コスト生産だけを狙う労働集約型産業の膨張抑制を狙い、外資参入 を幅広く受け入れてきた従来政策はすでに軌道修正済だ。その結果、自動車メーカーなど外資企業は日本勢を含め、 インドなどへの生産拠点移行など中国戦略の再考を迫られている。
中国では、過去に「SARS(急性肺炎)」、「電力不足」、「労働力不足(特に華南地区」、「水不足(特に華南地区)」、「人民元切り上げ」、「反日運動」など、投資マインドに影響を及ぼす要因がたびたび発生しているほか、「売上代金回収の難しさ」や、「知的財産権侵害(模造品の氾濫)」など、過去から課題となっている点も少なくない。その点からも、近年、中国への既進出企業が投資先の分散を検討し、中国の新規投資についても見直す企業が出てきており、その代替先の候補として、タイやベトナムが有力視されている。
ただ、これまでの投資は工場を中心にした製造業の輸出基地を目指すものだったが、多くの企業はすでに中国国内の消費市場としての魅力に目を向けており、同国内の市場拡大に合わせた投資活動も増えている。2007年11月に発表された国際協力銀行の「日本の製造企業の海外直接投資アンケート」調査結果でも、海外事業展開有望国の有望理由として、「安価な労働力」など低コストオペレーションに関する項目が減少する一方、「現地マーケットの成長性」など現地市場に関連した項目が増加し、日系企業の海外進出の動機が「低コストを求める海外投資から、新興国市場の成長性に着目した投資へ」変化が進む傾向が見られる。
以上のような一部の投資環境の変化とともに、法制度の未整備、知的財産権の侵害、電力・水不足による制約、土地をめぐる問題等課題も多い中国なので、投資にあたっては、十分な事前の情報収集・検討・対応策が必要である。
生産コストと労働供給
中国やタイ、ベトナムなどを事業展開先国として有望と見る企業のなかには「安価な労働力」を理由にあげているところも多く、特に中国を有望と見る企業では70%近くの企業が回答理由にあげている。ただし、実際の賃金水準で見ると、中国沿海部の主要地域(深セン、上海)はタイよりも高く、中国の労働力は必ずしも安価とは限らない。また、一般的に社会保険料や寮費などの福利厚生面での負担でも、タイでは基本給の10%以下であるのに対し、中国では基本給の30~40%近くを要するのが現状である。さらに、経済発展の差異(インフレなど)からも、一般的な賃金上昇率ではタイより中国の方が高くなっており、実質的な人件費で見れば、将来的に中国が優位性を失っていく可能性もあると考えられる。日本貿易振興機構(ジェトロ)が2006年11―12月に東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国、 インド、中国、韓国、香港、台湾に進出している日系製造業企業を対象に実施したアンケート 調査によれば、中国との製造原価の比較で、ASEAN6カ国の日系企業の33%が「進出先の国の方が安い」と回答しており、 ベトナムは62.5%、タイは30.1%に上っている。
さらに、広東省など華南においては、内陸からの出稼ぎ労働者を安い人件費で容易に確保できるという状況がすでに変わり始めている。特に、賃金水準の低い香港・台湾系企業においては、すでに人集めが難しくなってきており、比較的高い賃金を払ってきた日系企業も今後影響を受けるであろう。内陸への企業進出で、内陸の都市でも働く場所が見つかるようになってきたこと、多少賃金が安くても郷里の近くで働くほうがよいという傾向の反映とみられる。技術者に至っては、地域を問わず、人材が払底している。上海を中心とした華東地域では、事務職の人材が不足気味で、特に日本企業にとって、日本語ができる人材の不足が頭痛の種になっている。特に日系企業の場合、日本の本社の制度に縛られて、大胆な成果主義にもとづいた賃金体系を取り入れられないことも、欧米企業と比較して、現地の優秀な人材が集まらない理由になっている。今後、日系企業は、マネジメントの根本的な見直しが必要となるだろう。
近年の外国からの直接投資の傾向
中国が2001年にWTOへ加盟して以降、海外企業による中国への直接投資は拡大する一方である。ただし、その一方で、通貨人民元レートの上昇や、上海、深セン周辺を中心に人件費などのコスト上がっていることで、海外企業が投資を第三国に分散させている可能性がある。実際、日本及び欧米企業の中国国内の自動車、電子情報業などの分野に対する投資額は減少傾向を見せている。一方、非製造業に対する投資は非常に活発となっている。 国・地域別の金額で、投資額が多いのは香港、英領バージン諸島、日本、韓国、米国の順。
日本の対中直接投資については、日本貿易振興機構(JETRO)の統計によると、2007年、日本の対中直接投資額は747億7000万ドル(約5233億9000万元)に達し、前年比13.6%増。投資目的のうち、北京オリンピックや、上海万国博覧会開催に関連する不動産への投資は同期比のほぼ倍に増加したが、製造業に対する投資は横ばい状態。日本企業による2007年中国製造業に対する投資額は、406億7000万ドル(約2860億9000万元)と、前年同期比4.6%減少。ただ、減少はしたものの、日本企業による中国製造業に対する投資額は、日本企業による対中投資総額のうち、60%を占めている。JETROは、2008年の中国製造業に対する投資増加の見込みは低いと予測している。
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