特に力を入れている産業、政府が推進している産業を比較。また、どの分野に輸出が強いのか?輸入においてはどうなのか?外貨準備高から見る経済力の推移とその発展に関して。例えば、タイは東洋のデトロイドを目指し自動車産業を伸ばして行きたい、など具体的な話を交えて。

1.特に力を入れている産業、政府が推進している産業

これまでタイへの投資の牽引役となり、現在でも関連企業の集積が進んでいるのが、自動車産業である。タイにおいて、自動車業界は経済の重要な位置を占める基幹産業のひとつであり、約8,000億バーツの収入、国内の産業労働者の約8%を占める雇用を創出している。そのため、タイ政府は、自国の自動車産業が引き続き大きく発展し、世界における生産拠点のひとつとなるように力を注いでいる。

タイの自動車産業の特徴としては、まず、完成車メーカーをピラミッドの頂点として膨大な数の部品供給メーカーが裾野の広い産業集積を形成しており「アジアのデトロイト」と称されるところにある。この背景には「自動車産業振興」を工業の柱としてきたタイ政府が、完成車輸入を禁止したり、国内部品産業育成のために部品の現地調達率を引き上げたりしたことがある。タイ政府は2010年までの自動車国内生産台数200万台という「アジアのデトロイト」計画の実現に向けて、官民が協力しながら、さらに自動車産業の強化に取り組む方針だ。

以下、タイの自動車産業に焦点を当てつつ、その優位性や課題を検証していく。

(1) タイの自動車産業の発展の歴史

タイの自動車産業の歴史は、政府による輸入代替産業の育成政策の実施に伴い、日系メーカーを中心とする外資の進出が相次いだ1960年代初頭にまで遡る。当初は単純な組立方式を主体とした工場が中心だったが、1970年~1980年代にかけて政府が国産化政策を強化したことを背景に、日系部品メーカーを中心とした進出により裾野が徐々に広がっていった。1980年代後半になると、タイ経済の高度成長に伴い、国内の自動車販売台数が大幅に増加し、1985年に8.5万台だった国内の自動車販売台数が1996年には58.9万台まで達した。しかし、国内の自動車の販売台数や生産台数は共に1997年7月の通貨危機を境に急減した。特に、国内販売台数は1998年に14.4万台と、1996年と比べ4分の1の水準まで落ち込んだ。そこで、ピーク時の30%以下と急激に低下した工場の稼働率を引き上げるためにメーカー各社は、それまで日本の本社工場で製造していた輸出用車種の生産をタイ工場へ生産移管することで、タイから完成車を輸出することで稼働率を引き上げる努力をしてきた。このような背景により、タイはこの頃から国内市場としてだけでなく、輸出拠点として新たに注目を集めるようになり、欧米や韓国のメーカーも低コストを求めて続々と進出してきた。1998年以降は自動車の国内生産が再び増加傾向を辿り、生産台数は2002年には通貨危機前の1996年を上回り、2005年には自動車国内生産台数が年間実績で100万台を突破した。一方、国内販売台数や輸出台数も順調な増加基調を続けており、自動車産業は、今後もタイにおける主要産業として一層の発展が期待されている。

(2) タイの自動車産業の発展の特徴

タイの自動車産業の特徴としては、まず、完成車メーカーをピラミッドの頂点として膨大な数の部品供給メーカーが裾野の広い産業集積を形成しており、「アジアのデトロイト」と称されるところにある。完成車メーカーが、厳しい現地調達率目標をクリアするために1次部品メーカーに進出を促し、1次部品メーカーは2次部品メーカーに進出を促すという具合に集積サイクルが産まれ、現在では3次・4次部品メーカーや、付随するサービス会社も進出している状況だ。

また、タイの自動車産業は、その古い進出の歴史背景から、生産・国内販売・輸出において、実に9割のシェアを日系メーカーが占めている。そのため、タイには日本の自動車メーカーと部品メーカーの工場進出が集中している。自動車部品を構成する材料や半製品にまで広げると、タイほど、自動車関連の日系関連企業が進出している国は無いと言える。これまで、タイ製自動車のコスト、品質、性能レベルを世界水準に引き上げる絶え間ない努力が、自動車メーカーや部品メーカーだけでなく、材料メーカーや加工業者なども含む、広い分野で取り組まれてきた。さらに、トヨタ、いすゞなどは生産能力の拡大と共に、現地市場の嗜好に合った新車種をタイムリーに投入するため、大型R&D(研究開発)拠点の新設や拡張を行っており、車両設計から生産、販売までの一貫体制の構築を着々と進めている。今後もタイの自動車市場は景気動向が特段の変調をきたさない限り、拡大基調を維持すると見られる。

(3) 自動車の輸出拠点して発展するタイ

自動車メーカー各社がタイをアジアや中東向けの輸出の拠点と考えている。今やタイは世界百数十カ国以上に自動車を輸出する自動車輸出国として成長している。日系自動車メーカー各社は、AFTAにより最終的に関税がゼロになることを見越して、タイを「アセアンの輸出拠点」と位置付け、今後も投資を加速させてゆく方針のようだ。トヨタは自社初である日本のベース車両を持たない海外生産車種である「IMV(世界戦略車)」のプロジェクトをタイで始動し、2004年8月よりピックアップトラック、SUV(多目的車)の新型車を生産し各国へ輸出しているが、国内外でこれらが予想以上の売れ行きを見せており、2007年には更に10万台まで増産できる新工場を建設し操業を開始している。自動車メーカーの多くは小型ピックアップトラックの生産をタイに集約し、タイから世界に輸出している。商用車のピックアップトラックは、タイ国内では税金が乗用車よりもかなり安いことや、その用途の広さから根強い人気を誇っている。じつに、タイ国内の自動車販売の6割以上を占め、販売規模は世界最大の米国に次ぐ。

こうした中、タイ政府は、2007年6月、国策として低燃費の小型乗用車「エコカー」を、輸出戦略モデルとして育成する方針を発表した。外資の呼び込みだけでなく、自国内でのエコーカーの普及で、発展途上国タイの課題である大気汚染も改善しようとしていると見られる。世界最高水準の燃費性能と安全基準を満たす「エコカー」は、物品税が減額されることから、販売面でも需要増が期待される。日系ではすでにトヨタ、日産自動車、ホンダ、スズキ、三菱自の5社の投資計画が政府から承認を得ている。インドの自動車大手タタ・モーターズ等も承認を得ているため、総投資額は日本円で計2000~3000億円を上る見通しだ。トヨタは2012年にチャチェンサオ県の工場を約150億円を投じて増設しエコカーを年10万台生産する。スズキもラヨーン県に約300億円を投じて年産10万台以上の新工場を建設し2010年夏に稼働させる予定だ。タイ投資委員会(BOI)によると、各社とも生産台数の半分以上を輸出に充てる計画で、タイはピックアップに続き、環境問題やガソリン高で世界的に需要が拡大しているエコカーでも生産・輸出拠点となる予定だ。

(4) タイは中小自動車部品メーカーのビジネスチャンス

自動車メーカー各社が今後もタイでの増産を計画している現状では、自動車部品需要についても大幅な増加が見込まれる。さらに、自動車メーカー各社は部品の現地調達率を限りなく100%に近い水準に引き上げる努力をしており、アセアン域内においても部品の最適調達体制の構築に取り組んでいる。2003年よりタイ、インドネシアなど、アセアン加盟5ヶ国において域内関税が引き下げられたこと等からタイからの自動車部品輸出は大幅に増加しており、今やタイは完成車だけでなく、部品の供給基地にもなりつつある。

タイの自動車産業は現在4次部品メーカーが進出している最中であり、自動車メーカー各社もコスト削減のために、自動車部品メーカーだけではなく、家電部品メーカーから部品調達を行うなど、従来の系列だけでなく、産業を超えた部品調達を活発に行っている。このような環境下においては、たとえ後発組の進出企業であっても高い技術力と価格競争力があれば、受注が得られるような状況にあるためビジネスチャンスは少なくない。ただし、その事は同時に、品質やコスト面で、日系企業だけではなく、欧米メーカーやタイローカルの部品メーカーを含めた、激しい競争にさらされるということを意味する。しかし、日系部品メーカーは日系自動車メーカーに対し以前から安定供給を行ってきた実績があり、品質や納期の面でも、欧米やローカルの競合相手と比べて、きめ細かい対応が出来る点で優位に立っている。また、欧米部品メーカーは一般的に生産量が少ないため、スケールメリットが発揮できず、製造コストが割高になっているという声も聞かれる。

このように、自動車部品メーカーにとってタイへの進出は、タイで圧倒的な存在感を誇る日系や欧米等の自動車メーカーとの系列を超えた取引が狙えるだけでなく、輸出を通してアセアン域内、インドなどのFTA締結国の自動車関連メーカーとの取引も期待できるという点が最大のメリットと言える。

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